GameCube 用ゲーム「バイオハザード」のムービーでは、リアルな表情を得るために様々な工夫をしています。光学式モーションキャプチャーシステムVICON8と、非接触型モーショントラッキングシステムEyematic FaceTracker TMを組み合わせたモーションキャプチャーの試みを中心に紹介いたします。

フェイシャルキャプチャーとは、モーションキャプチャーの技術を応用して役者の表情をそのままデータ化する技術です。この技術を利用することで、キーフレームアニメーションでは得られない、リアルな表情を作成することができます。具体的には、役者の顔面に追跡用のマーカーを貼り付け、そのマーカーの動きを3次元データ化するのですが、この方法には大きな問題がありました。それは、眼球にはマーカーを付けられないため、表情を作る上で重要な瞳の動きまでは追跡できないことです。従って、これまでは後から手作業で瞳の動きを付けていたのですが、やはり微妙なニュアンスまで再現することは困難でした。今回のバイオハザードのムービーでは、この課題を克服すべく新しい試みに挑戦しました。

Eyematic FaceTracker TMは、ビデオカメラから得た顔の映像を自動的に解析し、マーカなしで、かつリアルタイムにフェーシャルキャプチャが行えるシステムです。非接触型なので、瞳の動きも追跡することが可能です。
ところが、このシステムではマーカーレスでキャプチャーが行える半面、常にカメラが顔を正面から捉えていなければならないという条件があり、演技をしながらのキャプチャーは不可能です。そこで、このシステムを演技をしながら利用するためにヘッドマウントカメラを開発することにしました。ヘッドマウントカメラには軽いカメラと、顔を照明するための白いLED を取り付けています。ヘッドマウントカメラがVICON8 カメラの邪魔にならないように極力小さく細く、そして役者の負担にならないよう極力軽くする工夫が必要でした。FaceTracker TMがVICON8 用マーカの影響を受けるのではないかという心配がありましたが、FaceTracker TMが誤認識することはまったくありませんでした。
Vicon8 用のマーカーと、FaceTracker TM
ヘッドマウントカメラを装着
緑の点がFaceTracker TMにより自動的に判別された
特徴点瞳の位置も追跡されている


アニメートされたマスクモデル
キャプチャーしたマーカーのデータをCG モデルに割り当てる際、直接CG モデルの頂点に割り付ける方法が一般的です。ところが、この作業は大変時間のかかる作業で、しかもモデルが変更になるとすべてやり直す必要があります。そこで今回はモデルの変更に容易に対応できる、汎用性の高い手法を構築しました。最初に単純なマスク状のモデルを用意し、そのモデルをマーカーのデータで変形させます。次に、そのマスクモデルを使って実際のCGモデルを変形させるという、間接的なデータの割付け方法です。この方法を用いることで、モデルの修正や差し替えが容易になり、よりクオリティの高い表現が可能となりました。

現在のキャプチャーシステムでは、シワや、二重まぶたなど細かい部位の情報を取り出すことができません。シワの表現は、シワに影響するマーカーの位置関係からシワの大きさを自動で計算する式を組み立て、ディスプレイスマッピングで実現しました。まぶたの細かい動きは、複数のまぶたの形状を作成し、それらのモーフィングで行っています。モーフィングパラメータもマーカーの位置関係から自動的に計算する方法を用いています。
モーションが適用された最終モデル

表情のみの収録でも体全体で演技を行う
リアルな表情を作るためにはキャプチャーやCGの技術だけではなく、キャプチャー時の工夫も必要です。役者の自然な表情を引き出すため、なるべく体の動きに制限を与えてはなりません。今回のキャプチャー時には、約90度の範囲でしか顔を振ることができませんでしたが、その後の研究・開発により、現在では360度、自由に顔を動かすことが可能となっています。

MoCap Actor :松井 哲哉(松井エンタープライズ)

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